寺内大輔 作曲家・即興演奏家
広島大学・同大学院准教授。 エリザベト音楽大学大学院,九州大学大学院修了。作曲を,伴谷晃二,近藤譲,クラース・デ・ヴリーズ,ヴィム・ヘンドリクスの各氏に師事。室内楽作品の他,パフォーマンスのための作品,即興演奏のための作品,水族館やパソコンソフトのBGM,校歌・寮歌など多方面にわたる作曲活動を展開。その他,美術分野と関わりの深い作品やカードゲームの制作も手掛けている。即興演奏分野では,声を中心とした様々な楽器の持ち替えによるスタイルで,コンサートホールのみならず,クラブや美術館,路上にいたるまで様々な場所での演奏を行っている。 これまで,日本を含む13 カ国の芸術祭,コンサートで作品発表・即興演奏を行い,楽譜・CD 数点が国内外で発売中。
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《王の主題》 a.sax solo (2006)
1747年5月,J.S. バッハは,プロイセン王フリードリッヒ大王に謁見を許された。フルート奏者でもあった大王は,バッハに主題のメロディーを与え,フーガの即興演奏を求めた。バッハは,後にそれをまとめ直し「音楽の捧げ物」(BWV1079)として大王に献呈した。
フリードリッヒ大王がバッハに与えた主題は,堂々とした跳躍と半音階での順次進行が見事に同居し,大変魅力的である(バッハが大王にある程度の手引きをしたという説もあるようだ)。 私は,この旋律を使って作曲したいと感じ,本作を書いた。フリードリッヒ大王の主題を反復して提示し,その過程で音の強弱の操作による聴覚的距離感の変化と,跳躍による旋律の認識の変化をもたらすことを意図している。なお,本演奏会ではアルトサクソフォンが用いられているが,他の種類のサクソフォンでも演奏可能である。
フリードリッヒ大王がJ. S. バッハに与えた主題
寺内大輔