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田中吉史 作曲家

 

1968年生まれ。独学で作曲を始め、1994-5年にChaya Czernowinに師事。1988年と89年に現音作曲新人賞入選。1990年より作曲家グループ"TEMPUS NOVUM”のメンバーとして活動。1996年に秋吉台国際作曲賞を授賞。これまで器楽や声楽作品を中心に手がけてきた。近作に、楽器演奏する際の身体的制約に注目した独奏曲、既存の音楽作品から素材を抽出した作品、人間の話し声の録音に基づく「発話移植計画」シリーズなどがある。

 

作品の演奏動画はこちらからご覧になれます (YouTubeに移動します)。

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《道路交通情報の形式によるソロ》 s.sax. solo (2021-22, 初演)

人の話し声は、私にとって最も魅力的な音の一つで、音階には嵌め込むことのできない微細なピッチの変化、微妙な緩急や音色のうつろい、浮かんでは消えるさまざまなパターンなど、たとえ何を話しているのか、その内容がわからなくても、魅了してやまない。音楽でないことはわかっていても、私はいつも未知の音楽のように聴いているようだ。ということで、この20年ほど、私は人の話し声を主に器楽へと移植するというやり方で作曲することが多い。「道路交通情報の形式によるソロ」もその一つで、「科学論文の形式によるデュオ」「気象情報の形式による六重唱曲」に続くシリーズと言えるかもしれない。このシリーズでは、特に何らかの形式に従って情報が伝達されるような場面が題材になっている。「道路交通情報の形式によるソロ」では、イタリア・トスカーナ地方と日本の愛知県・名古屋近辺のラジオでの道路交通情報が用いられているが、もちろん、どこが事故のため通行止めなのか、渋滞がどこからどこまで何キロ続いているか、そんなことはわかる必要はないし、そもそも道路交通情報であることが聴き手の皆さんにとって、さらには私にとっても本質な問題であるのかどうか定かではない。

加藤和也さんの委嘱で、2021年から2022年にかけて作曲され、加藤さんに献呈されている。

田中吉史

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